気づかず悪化する肌荒れの原因と対策
はじめに
コロナ禍をきっかけに、私たちの生活に定着したマスク着用。
「マスクをしているから、肌は乾燥しにくい」と思われがちですが、
実はその**“湿った空間”が逆に肌を乾燥させてしまう**という事実、ご存じでしょうか?
この状態を「隠れ乾燥肌(インナードライ)」といい、見た目にはテカリや潤いがあるように見えて、実際は肌内部の水分が足りていない状態です。
今回は、医師の視点から「マスク生活による隠れ乾燥のメカニズム」と、「今日からできる改善法」をわかりやすくご紹介します。
マスクで肌が“うるおっている”のは錯覚?
一時的な湿気 → 急激な乾燥の原因に
マスクをつけていると、
- 呼気や汗でマスク内が湿気を帯びる
- 肌表面がしっとりしたように感じる
- しかし、マスクを外した瞬間に一気に水分が蒸発
- 肌の内側(角質層)の水分まで奪われる
という現象が起きています。
この状態が毎日繰り返されると、肌は内部の水分をキープできなくなり、表面だけベタついた“インナードライ肌”に移行します。
隠れ乾燥肌にありがちな症状
- 頬や口元がカサつくのに、Tゾーンはテカる
- 化粧ノリが悪い、すぐヨレる
- 突然ニキビや赤みが増えた
- スキンケアが沁みることがある
このような状態があれば、マスクの影響で肌の保水力が低下しているサインかもしれません。
医師がすすめる「隠れ乾燥肌」5つの対策
✅ 1. “保湿ファースト”のスキンケアルールに切り替え
隠れ乾燥には、「洗う・落とすケア」よりも**“保湿の質と順番”**が重要です。
- 洗顔は朝晩1回ずつ。乾燥が強い日はぬるま湯洗顔でOK
- 化粧水 → 乳液 → 保湿クリームの“水分→油分”の順でしっかり重ねる
- 肌が薄く敏感な人は、セラミド・スクワランなどのバリア成分配合を選ぶ
💡保湿後すぐにマスクを着けると蒸れやすいため、5〜10分おいてから装着するのがおすすめです。
✅ 2. マスク内の「摩擦」を最小限にする
マスクと肌がこすれることで角質が乱れ、バリア機能が低下します。
- 裏地がシルクや綿100%など、肌にやさしい素材を選ぶ
- 内側にワセリンをうすく塗布して摩擦ガード
- 長時間着けっぱなしにせず、可能なら1日2回交換
▶「こすらない」「密着させすぎない」が摩擦予防の基本です。
✅ 3. メイクは“密着タイプ”から“薄づき保湿系”へ
- 肌荒れ中はファンデーションをお休みするのも◎
- メイクをするなら、パウダーよりも保湿成分入りのリキッドタイプを軽くのばす
- 下地には「紫外線カット+保湿機能」付きのものを選ぶと安心
▶ 無理に隠すより、「肌に負担をかけない工夫」が長期的に美肌を守ります。
✅ 4. マスク内の“肌菌バランス”を守る腸活と食習慣
皮膚の表面には「皮膚常在菌」と呼ばれる善玉菌が存在し、肌のうるおい・pH・免疫を保っています。
これがマスク内の湿気・熱気・摩擦で乱れると、
- ニキビ・湿疹・皮むけなどのトラブルに
- 化粧水やクリームが合わなくなる
といった悪循環に。
そこで、肌の免疫を内側から整える食事が重要です。
肌を整える食材 | 効果 |
---|---|
納豆・ヨーグルト | 腸内環境を整える |
アボカド・ナッツ | セラミド生成のサポート |
鮭・くるみ・青魚 | オメガ3脂肪酸で抗炎症作用 |
キウイ・ブロッコリー | ビタミンCで皮脂バランス安定 |
✅ 5. 就寝中の「湿度」と「再生タイム」を整える
夜は肌の修復時間。
日中のマスクダメージをリセットするために、眠っている間のケアがとても大切です。
- 寝室は湿度50〜60%をキープ(加湿器 or 濡れタオル)
- 寝具は綿100%素材、枕カバーは清潔に
- スキンケアの最後に、ワセリンや保湿バームで水分蒸発をブロック
▶ 寝ている間に肌が整えば、翌朝のメイクノリも劇的に変わります。
医師からのひとこと
マスク生活は肌にとって“想像以上のストレス環境”です。
肌が乾燥していないように見えて、内側はカラカラ…という方は非常に多く、気づかぬうちに肌のバリアが崩れています。
大切なのは、
肌の声を見逃さないこと。
肌が変わったら、スキンケアも変えること。
です。
あなたの肌は、日々変化しています。
毎日のマスク生活だからこそ、今一度“保湿とバリア”を見直してみませんか?
まとめ
- マスクの湿気で“肌が潤っている”のは錯覚。内部は乾燥している可能性大
- 洗顔と保湿のバランスを見直し、「守るケア」が重要
- 摩擦・マスク素材・食事・睡眠環境も肌を左右する要素
- 肌を“ごまかす”より“育てる”意識が美肌を守るカギ
次回は「インナードライ肌を体質から改善する3週間集中スキンプログラム」について詳しくお届けします🧴
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Effects of prolonged face mask use on the skin barrier function.
Skin Research and Technology, 27(4), 509–516.
Denda M, et al. (2012)
Skin hydration dynamics and barrier function in dry environments.
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