40代後半から50代にかけて、多くの女性が感じる「肌のハリの低下」「乾燥」「シワ」「たるみ」。
これらは単なる“老化現象”ではなく、エストロゲン(女性ホルモン)の減少が深く関係しています。
今回紹介する2024年のレビュー論文「Menopause and the Effects of Hormone Replacement Therapy on Skin Aging」は、
産婦人科の立場から、更年期・閉経後の皮膚変化とホルモン補充療法(HRT)の影響をまとめたものです。
🧬 エストロゲンと皮膚の関係
エストロゲンは単に生殖を司るホルモンではありません。
皮膚においては、以下のような働きを担っています。
- コラーゲン合成の促進:真皮層で線維芽細胞を刺激し、肌のハリを維持
- 水分保持力の維持:ヒアルロン酸・グリコサミノグリカンの生成をサポート
- 血流改善:皮膚の酸素供給と代謝を高める
- 抗酸化作用:紫外線ダメージや炎症を軽減
したがって、閉経によってエストロゲンが急減すると、
皮膚厚の減少(約30%低下)、弾力低下、乾燥、色素沈着などが一気に進みやすくなります。
🩺 HRT(ホルモン補充療法)は肌にどこまで効くのか?
論文では、HRT(エストロゲン補充療法)を行った女性と行っていない女性を比較した複数研究が引用されています。
結果として、
- 皮膚の厚みが平均約15〜25%増加
- 真皮コラーゲン密度の上昇
- 乾燥・かゆみ・小ジワの軽減
- 創傷治癒の促進
といった明確な改善効果が示されています。
一方で、効果の程度は個人差が大きく、全ての女性に劇的な「若返り効果」があるわけではありません。
特に日光ダメージ(光老化)が強い場合、ホルモン治療単独では十分な改善が得られないことも指摘されています。
💊 投与方法と安全性
HRTには、
- 経口(錠剤)
- 経皮(貼付剤・ジェル)
- 局所(膣用クリーム)
などの形があります。
論文では特に経皮投与が推奨されており、
肝臓での代謝を避けることで副作用を軽減し、より安定した血中濃度を維持できると報告されています。
**副作用リスク(乳癌・血栓症など)**も慎重に評価されており、
短期間・適切な量で使用すればリスクは限定的とされています。
産婦人科医による定期的なフォローが不可欠です。
🧠 皮膚科的アプローチとの併用が鍵
論文では、ホルモン補充のみならず、
- 日焼け止め・抗酸化ケア(ビタミンC・E)
- レチノイド・ペプチド外用
- レーザー・RFなどの再生医療的治療
といった皮膚科的アプローチとの併用が、最も効果的と強調されています。
つまり、「ホルモンで内側から」「スキンケアで外側から」という
統合的エイジングケアが、今後の標準になると述べられています。
🌿 医師からのまとめ
更年期の肌変化は「ホルモン低下」という明確な医学的根拠を持っています。
HRTは肌のハリ・潤いを取り戻す科学的に裏づけのある治療法の一つですが、
リスクとメリットを理解し、専門医のもとで個別に調整することが大切です。
女性のライフステージに合わせて、
「ホルモン」「栄養」「スキンケア」「睡眠」をバランス良く整えることが、
最も自然で持続的な“美肌医療”と言えるでしょう。

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